下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤について

下肢静脈瘤について血液は24時間、休むことなく体を循環しています。心臓から動脈を通して酸素に富んだ血液が全身に送られ、静脈を通して二酸化炭素を含んだ血液が心臓に戻ります。

人が立っているとき、心臓と足先にはおよそ1mの高さの差があります。血液は液体ですから、本来ならば重力に逆らって足先から上へ向かって流れることはできません。しかし静脈にはところどころに半月状の弁(静脈弁)があり、血液の逆流を防いで、心臓へ戻っていくための手助けをしています。

足先に流れた血液が下から上へ向かって心臓に戻るためには、この静脈弁とふくらはぎの筋肉の協調が必要です。筋肉が静脈を圧迫することで血液は上方か下方へ押し流されることになりますが、静脈弁が働くことで血液は下方には流れず、心臓へ向かって上方へと戻っていくことができるのです。静脈瘤はこの静脈弁の働きがうまく機能しなくなったことによって起こります。静脈弁が機能しなくなると、血液は上へと上っていけなくなるため、血管内にたまってしまい、瘤状にふくらんでしまいます。これが静脈瘤です。

下肢静脈瘤の原因

下肢静脈瘤の原因下肢静脈瘤は足の静脈を流れる血液が逆流してしまい、足の下のほうに溜まった血液により血管が拡張して瘤のようになることで起こります。
血液が逆流してしまうのは静脈の中にある静脈弁(逆流防止弁)が壊れたりうまく閉じなくなってしまうからです。
押し上げられた血液が下に戻らないようにするために、ハの字型をした静脈弁が色々な場所にあるわけですが、これが妊娠や出産、立ち仕事などによって壊れてしまうことがあるのです。
逆流防止弁は一度壊れてしまうと自然に修復するということがないため、血液の逆流を食い止めることができなくなり下肢静脈瘤が進行してしまうのです。

下肢静脈瘤になりやすい人

下肢静脈瘤は、年齢や性別、環境などさまざまな原因により起こる病気です。ここでは、下肢静脈瘤が発症しやすい要因についてご紹介します。

加齢

加齢下肢静脈瘤は足にある静脈の弁がうまく働かなくなったり、壊れたりすることで起こります。そのため、加齢は大きな原因のひとつとなっています。また、年齢を重ねるにつれて運動不足になって筋力が弱まり、血管に大きな負担をかけることも要因とされています。年齢で見ると、発症は30~50代に多くなっています。

性別

性別男女で下肢静脈瘤の発症を比べると、男性1に対して女性は2倍の発症率となっています。女性の発症率が高いのは、妊娠や出産に関係があります。妊娠中は黄体ホルモンの働きが促進するため下肢への血流量が増加します。そのため、血管や静脈弁に負担がかかってしまいます。

遺伝的なもの

逆流弁が生まれつき弱い体質は、下肢静脈瘤になりやすいと言えます。そのため、血縁者に下肢静脈瘤がある場合、発症する可能性は高まります。両親がふたりとも下肢静脈瘤である場合、その子どもは90%が発症するという報告があります。

立ち仕事

長時間立ちっぱなしであまり動かないと、足の静脈弁や血管に大きな負担がかかってしまいます。そのため、美容師や理容師、調理師、販売員などの職業に下肢静脈瘤の発症率が高くなっています。また、1日10時間以上の立ち仕事を続けていると、下肢静脈瘤は重症化しやすいとされています。

下肢静脈瘤のチェックリスト

下肢静脈瘤は、進行によりさまざまな症状が現れます。
チェックリストでは、初期に現れるものから進行した時に現れるものまで、代表的な症状をご紹介しています。

  • 夕方や夜になると足がむくむ・だるい・重い・疲れる
  • 夜中や明け方に足がつって目が覚めることがある
  • 足の細い血管が網目やクモの巣のように皮膚から透けて見える
  • ふくらはぎや太腿の皮膚に瘤がボコボコ浮き出ている
  • 足が痒い
  • 足首の皮膚が茶色や黒っぽくなった
  • 足にシミや色素沈着が現れはじめた
  • 足の皮膚が以前より硬くなってきた
  • 足に湿疹ができやすい
  • ふくらはぎの内側がただれる・潰瘍ができて治りにくい

症状以外でも、血縁者に下肢静脈瘤を発症した人がいる場合にはリスクが高いと言われています。
進行すると皮膚下にミミズが丸まっているような瘤が現れたり、細かい血管が透けて見えたり、色素沈着やひどい皮膚疾患が起こる場合があります。見た目が気になって「スカートがはけない」「温泉旅行に行けない」とお悩みになる方もよくいらっしゃいます。進行すると治りにくくなりますので、気になったら早めに専門の医療機関を受診しましょう。