下肢静脈瘤の症状と種類

下肢静脈瘤の症状の主な特徴

下肢静脈瘤の症状の主な特徴静脈瘤が原因で起こる症状は、主に長時間立っているときに見られます。起床時に症状が見られなくても、長時間立ち仕事をした後や夕方になると、脚の痛みや重さ、だるさなどが現れるのが特徴です。

立ち仕事の合間などに脚を上げて休んでいれば症状は和らぎます。逆に、日中は痛みやだるさがなくても、就寝時に脚が痛くなるのは静脈瘤の症状ではありません。

静脈瘤による脚のむくみや痛みをうったえる方のなかには、座骨神経痛や膝の関節炎を患っている方もいます。こうしたケースでは静脈瘤の症状の程度がどれほどを占めているのか判断しづらいことがあります。

このような場合、静脈瘤の主要な治療法のひとつである「圧迫ストッキング」を着用していただき様子をみます。着用後に改善した症状は静脈瘤によるもの、改善しなかった症状がその他関節炎などの症状、と判断することができます

下肢静脈瘤の進行度別症状

下肢静脈瘤は進行により症状が変化し、進行度合いによって治療法も異なります。ご自分の症状から、進行度合いを把握しておきましょう。

第一段階:足のむくみ・だるさ・重さ

こうした症状は下肢静脈瘤の初期症状によくあるものですが、他の病気である可能性もあります。特にむくみやだるさが続く場合、重篤な疾患の可能性がありますので、早めに受診してください。

第二段階 軽症:足の細い血管が浮き出て見える

皮膚から血管が薄く浮き出て見える状態で、まだ瘤にはなっていない軽症の段階です。網目やクモの巣のように広がって見える場合もあります。

第三段階 :太い血管が浮いて瘤のようになる

皮膚の下に太い血管が浮き出てきて、蛇行や瘤になっている段階です。下肢静脈瘤を自覚して受診される方は、ほとんどがこの段階です。軽い色素沈着や皮膚炎が起こっているケースもよくあります。

第四段階:色素沈着や皮膚炎を起こしている

長期間放置して重症化した下肢静脈瘤は、色素沈着や皮膚炎を発症し、湿疹や皮膚硬化を起こす可能性があります。それを放置した場合には、皮膚がただれて潰瘍化します。潰瘍化が起こってから治療を開始した場合、完治まで数年かかることもあります。

下肢静脈瘤は自然に治癒することはなく、徐々に進行していく病気です。重症化した下肢静脈瘤は治療が困難になりますので、太い血管が浮き出てくる第三段階には必ず受診するようにしましょう。

下肢静脈瘤のタイプ

伏在型

伏在型伏在型下肢静脈瘤の中で最も多いタイプで、静脈瘤で太い瘤を形成します。大伏在静脈や小伏在静脈と言われる表在静脈本幹に発生し、蛇行したり、ボコボコとふくらんだ血管が特徴で、場所では太腿やふくらはぎ、膝の裏などに目立ちます。

大伏在

大伏在静脈は足首の内側から上に伸び、足の付け根で深部静脈に合流する血管で、足にある表在静脈の中では最も高頻度に静脈瘤を形成するとされています。大伏在静脈本幹のほかに、主要分枝に発生することもあります。そのため、発声する場所は、下腿から大腿部内側、下腿の外側、大腿部の背側などがあります。

小伏在

表在静脈である小伏在静脈は、アキレス腱の外側から伸びて膝の裏で深部静脈合流します。そのため、発症する場所は足首の後ろや膝の後ろになります。大伏在静脈瘤に次いで多い静脈瘤です。

側枝型

側枝型側枝型側枝静脈瘤は分枝静脈瘤とも呼ばれており、伏在静脈本幹から枝分かれした静脈の拡張によってできます。観られる場所は主に膝から下の部分です。特徴として、孤立性のことがあり、伏在静脈瘤よりやや細いとされています。

陰部

卵巣や子宮周囲の静脈から逆流してきた血液により作られる静脈瘤です。蛇行血管が足の付け根から太ももの裏側にボコボコと斜めに走り、下腿まで広がったら陰部静脈瘤が疑われます。また、月経時など卵巣や子宮への血行が増える時に症状が強くなることも大きな特徴となっています。

網目状・クモの巣状

網目状・クモの巣状網目状・クモの巣状ボコボコとした瘤のような盛り上がりのない下肢静脈瘤です。網目状静脈瘤は、直径径2~3㎜の細い皮下静脈が網目状に広がります。クモの巣状静脈瘤は、さらに駒かい直径0.1~1㎜の真皮内静脈瘤です。

放置するリスク

下肢静脈瘤は自然に改善することはなく、放置していると症状は少しずつ悪化していきます。重症化すると湿疹が何度もできて治りにくくなり、脂肪皮膚硬化症を起こすなど「うっ滞性皮膚炎」を合併しますし、「潰瘍」ができる可能性もあります。

通常、下肢静脈瘤は60歳前後がピークになっており、その後症状はあまり悪化しなくなります。ですから、ご高齢の方で症状が軽い場合にはそれほど心配する必要はありません。ただし、40~50代の場合、つらい症状や、見た目が気になるなどがありましたら早めに受診しましょう。

なお、重症化してうっ滞性皮膚炎や潰瘍を合併した下肢静脈瘤でも治療は可能です。ただし、回復まで時間がかなりかかることが多く、皮膚炎の跡が残る可能性があります。できれば重症化する前にご相談ください。

静脈瘤とエコノミー症候群の関係

エコノミークラス症候群とは

座った状態でリラックスしたふくらはぎの筋肉は、血管を圧迫していません。そのため、足先から静脈を通って心臓へ戻る血流はとてもゆるやかになります。

飛行機などで長時間同じ姿勢で座っていると、血流が滞り、水分不足も相まって血液粘度が上がり、深部静脈内に血栓(血のかたまり)ができて血管壁に付着しやすくなります。

着陸後、急に立ち上がるとこの血栓がはがれ落ちて飛び、肺の血管が詰まることで肺の血流が滞ってしまうことがあります。

これを「急性肺動脈血栓塞栓症、エコノミークラス症候群」といいます。 肺血栓症では肺に酸素が取り込めなくなるため、死につながることも少なくありません。

下肢静脈瘤とエコノミークラス症候群

下肢静脈瘤がある場合、静脈瘤がない人よりもエコノミークラス症候群を起こしやすいといわれています。 しかし、静脈瘤の治療をすれば、エコノミークラス症候群のリスクが下がるというわけではありません。 下肢静脈瘤で治療するのは浅在静脈です。 そのため深部静脈内で発生する血栓が原因のエコノミークラス症候群が起こる可能性はじゅうぶんにあり得るのです。

エコノミークラス症候群の予防

エコノミークラス症候群は、狭い座席で長時間脚を動かさなかったり、水分補給をしないことによって発症するリスクが高まります。 以下の項目を実践することで、発症のリスクを低減することができます。

  • 脚を動かし、ふくらはぎの筋肉を働かせる
  • 足指でじゃんけんをする
  • 踵の上げ下げをする
  • ふくらはぎをマッサージする
  • まめに水分補給をする

脚の筋肉が血管を圧迫することで、血流が早くなります。水分を補給して血液粘度を高めず、血管内を血液がきちんと流れれば血栓はできません。