下肢静脈瘤について
手術で静脈を抜いたり、レーザーで焼いてしまった後の血流への影響は?
脚を流れる血液の大部分は、筋肉の内部を通る深部静脈を通って心臓に戻ります。一方、弁不全を起こしている静脈はほとんどの場合、脚の表面を通る浅在静脈です。治療ではこの浅在静脈を潰し、深部静脈は温存するので血流に問題はありません。弁不全を患っている血管はないほうが血液循環が良くなります。
静脈瘤の原因である弁を治す必要性は?
静脈瘤は静脈にある弁がうまく機能しないことで起こるので、理論的には弁を治せば症状は改善するはずです。しかし、浅在静脈の弁を治すための手術は時間もかかり、傷も大きくなるため、体にかかる負担は大きくなります。入院も必要で、メリットはあまりありません。浅在静脈ではなく、深部静脈に弁不全がある場合には、弁を治す手術や弁の移植手術が必要になります。
静脈瘤の治療に効果的な薬や食べ物、運動やマッサージはありますか?
残念ながら現時点では、すでにできてしまった静脈瘤や機能不全を起こした静脈弁を治す薬や食品、運動、マッサージ法などはありません。
静脈瘤はどうすれば予防できますか?
静脈瘤は静脈弁の不全により、血液が逆流することで起こります。血液が心臓に向かって順調に流れれば、血液の停滞は防げます。有効な予防法としては、太りすぎないこと、適度な運動、圧迫ストッキングの着用などがあります。しかし、遺伝など体質的な要素も関係しますし、立たずに生活することはできないので、必ず効く予防の決め手はありません。
静脈瘤が破れて出血することはありますか?
まれに下肢静脈瘤が破裂して、大量に出血することがあります。そのような場合には、1)慌てず、2)横になって脚を上げ、3)出血している部分を軽く圧迫してください。圧迫して出血が止まったら、病院で適切な処置を受けてください。
静脈瘤を放っておくとどうなりますか?
妊娠が原因でできた静脈瘤は、出産後に消えることがあります。それ以外の静脈瘤は自然に消えることはありません。徐々に悪化していくか、現状のままか、どちらかです。
静脈瘤があると、動脈瘤になる可能性もありますか?
静脈瘤と動脈瘤はまったく別の病気です。下肢静脈瘤は静脈の弁がうまく機能しないことが原因です。一方、ほとんどの動脈瘤は、動脈硬化が原因で起こります。
治療について
治療には何回くらい通院する必要がありますか?
標準的な日帰り手術では、通常7回通院いただいています。内訳は、初診日、術前検査日、手術当日、手術翌日、1週間後、1ヶ月後、4ヶ月後、1年後です。
お忙しい方や遠方でやむを得ない場合には、初診日を除いて手術当日と手術翌日の最低2回が必要です。手術後の通院回数、通院する曜日や時間帯など、患者さまのご都合にできるだけ合わせるよう心がけておりますので、お気軽にご相談ください。
手術前検査の費用を教えてください
手術前検査では血液検査と心電図検査を行い、その費用は保険診療で3割負担の場合、約6500円の自己負担が目安です。血液検査は、腎臓や肝臓などの一般的な検査の他、血液の固まりやすさ、さらにB型・C型肝炎、HIV、梅毒などの感染症について調べます。また、甲状腺の病気や、糖尿病の持病がある方には追加の検査が必要になる場合もあります、
手術後は何回通院する必要がありますか?
どうしても複数回の通院が難しい場合には、手術翌日の受診だけで大丈夫です。ただし、下肢静脈瘤は手術後の合併症や再発の可能性があるため、手術後に5回通院いただく1年間の経過観察を当クリニックではおすすめします。内訳は手術翌日、1週間後、1ヶ月後、4ヶ月後、1年後です。
術後、弾性ストッキング履かなければいけない期間はどのくらいですか?
最低3週間の着用が必要であり、手術後5日目までは就寝時にも着用します。弾性ストッキング着用は、手術後の深部静脈血栓症やむくみを予防するためのものです。調理師や美容師といった立ち仕事以外であれば、手術後3週間着用の後は着用する必要はありません。
硬化療法後は、何度くらい通院が必要ですか?
硬化療法を受けた後は、2回診察を受けていただいています。比較的軽い静脈瘤の治療であり、治療内容も注射だけですので傷を消毒する必要はありません。術後は弾性ストッキングを3週間着用しますが、診察は治療1ヶ月後に受けます。ここで治療の効果が十分だと判断されたら、その6ヶ月後に診察を受け、検査の後に終了となります。
遠方に住んでいます。初診日の次の日や1週間以内の手術は可能ですか?
海外の患者さまや、何回も来院いただくのがとても難しい方には、ご相談の上できる限りご希望に沿ったスケジュールをご提示しています。たとえば、地元の医療機関で静脈瘤の診察と心電図や血液検査など手術前の検査を受けていただき、手術日を決めて当クリニックにご来院いただくなどの方法も可能です。ただし、当クリニックで診察した結果、手術が必要ないと判断されたり、手術ができない状態だと判明したり、手術が中止になる可能性があります。それを避けるためには、最低限、初診と手術の2回のご来院をお願いしています。遠方の方は、まずお電話でご相談ください。