鼠径ヘルニアが発症する仕組みとお腹のヘルニアの種類

鼠経ヘルニアが起こるメカニズム

鼠経ヘルニアが起こるメカニズムお腹の内臓は筋膜で包まれていて、その筋膜によって直立しても正常な位置を保っています。筋膜には神経や血管などが通る穴がいくつか開いていますが、筋膜の穴が弱い・ゆるんでいる・裂けるなどがあると腹圧が上がった時に穴から内臓の一部が飛び出てしまうことがあります。身体の前面で胴体と足の境目である鼠径部の皮膚にふくらみができるものを鼠経ヘルニアと呼びます。主に腸が飛び出てくるため、脱腸と呼ばれていますが腸以外の組織が脱出することもあります。
初期の鼠経ヘルニアは押せば戻りますが、脱出を繰り返すうちに筋膜の穴が広がっていって大きく飛び出すようになっていきます。進行すると脱出したものが戻らなくなって腸閉塞を起こすことがありますし、締め付けられて脱出した部分の血流が悪化して腸が壊死してしまう可能性もあります。脱出したものが戻らなくなった状態は嵌頓と呼ばれます。嵌頓が起きた際にはできるだけ早く受診してください。

腹部のヘルニア

腹部のヘルニアヘルニアは組織が本来の場所から脱出してしまうことを指す言葉で、鼠経ヘルニアを含む腹部のヘルニア以外にも頸椎や椎間板のヘルニアがあります。
腹部のヘルニアは、鼠経ヘルニア、大腿ヘルニア、臍ヘルニア、瘢痕ヘルニアがあります。

鼠経ヘルニア

恥骨近くの腹壁や男性では精索(睾丸へつながる血管や精管の束)、女性では円靭帯(子宮を支える靭帯)に沿ってヘルニアが出ます。

外鼠経ヘルニア

鼠径靱帯の上にあり、外側から飛び出している状態です。鼠径ヘルニアの中で最も多い疾患です。40代以降の男性に多くみられますが、女性でも外鼠径ヘルニアにかかることがあります。ヘルニアは自然に治ることはなく、膨らんだ部分を押し戻してもまた飛び出してしまいます。

内鼠経ヘルニア

筋肉の弱い内鼠径輪よりも内側の部分にできます。外鼠径ヘルニアと同じく筋膜が伸びて内臓が飛び出してふくらみが現れます。外鼠径ヘルニアとは、ふくらみができる場所が異なります。

大腿へルニア

足へ行く血管や神経が通る大腿管から脱出するヘルニアで、女性に多い傾向があります。鼠経ヘルニアと鑑別が難しいケースもあります。

臍ヘルニア

おへその下の筋膜が弱くなって裂け、そこから脱出したものでデベソのように見えます。出産、肥満、腹水などを要因として起こることがあります。

瘢痕ヘルニア

開腹手術で、筋膜が弱い、または縫合に問題があるなどした場合、そこから脱出が起こるケースです。

閉鎖孔ヘルニア

骨盤の部分にある閉鎖孔という穴が広く空いて、そこから内臓が出てしまう状態です。痩せ型の女性に多くみられます。ヘルニアができていても気づきづらいので、嵌頓を起こして痛みで初めて気が付く場合があります。